【第1弾】「宇宙を感じる1dayカレッジ」<記念講演>「現代天文学は私たちにどのように役立つのか」

2009 年に「世界天文年」の一環として誕生した六本木天文クラブ。

天文学普及プロジェクト「天プラ」 と「六本木ヒルズ」は、毎月第4金曜日に星空解説セミナーと星空観望会を行い、人々がさまざまな形で天文学に触れる機会の提供に取り組んでいます。

六本木天文クラブは誕生から10年。たくさんの来場者に恵まれ、参加者累計は約14万人を突破。東京の煌めく夜景と満天の星を楽しむイベントとして、六本木天文クラブの活動は定着しました。

10周年を記念し、2019年9月23日に六本木ヒルズ 森タワー49階のアカデミーヒルズで行われた一日がかりの大イベント、東京シティビュー×アカデミーヒルズ「宇宙を感じる1dayカレッジ」。

専門家達とともに宇宙について考えられる一日とあって、宇宙に対する何かしらのヒントを得られるのではないか。
そんな思いを胸に、編集部スタッフ・ゆみがこのイベントに参加してきました。

3つの記事に渡って本イベントをご紹介し、その第1弾として専門家を招いての記念講演「現代天文学は私たちにどのように役立つのか」の様子をお伝えします!

「宇宙を感じる1dayカレッジ」レジュメ

【開催の挨拶】14:00~14:10
「六本木天文クラブ10年の歩み」


【1時間目】14:10~15:30
<記念講演>「現代天文学は私たちにどのように役立つのか」


【2時間目】15:40~17:00
<トークセッション>「これからの宇宙の楽しみ方」

【3時間目】
17:10~18:20
<宇宙への取り組みの紹介>「宇宙×○○ ~宇宙のおいしい味わい方~」

【参加者交流会】
18:30~19:45

【開催の挨拶】「六本木天文クラブ10年の歩み」

「六本木天文クラブ」の主催運営を担う天文学普及プロジェクト「天プラ」代表/東京大学 特任准教授の高梨直紘さんが「宇宙を感じる1dayカレッジ」開催のご挨拶を務めました。

六本木天文クラブでは定期的な観望会に加え、七夕や流星群などの特別観望会、天文学の専門家を招いてのセミナー、星空案内人の養成講座や子供向けワークショップなど、様々な活動を行っています。

そのような六本木天文クラブはどのようにして生まれたのでしょうか。まずは、六本木天文クラブの誕生の経緯を振り返りつつ、10年という月日の中で出会い支えてきた登壇者たちのトークイベントをまとめてみました。

六本木天文クラブ 誕生の経緯



六本木天文クラブが立ち上がったのは、2009年のこと。この年は、ガリレオ・ガリレイが人類で初めて望遠鏡を夜空に向けてから400年目にあたり、これを記念して国際連合等によって「世界天文年」と定められた年でした。これに合わせて、世界中の国々では人々の宇宙への関心を高めるべくさまざまなイベントが企画されたのですが、その一環としてスタートしたのが六本木天文クラブでした。

天体観望会と言えば、ふつうは科学館や天文台のような場所で実施されるものです。しかし、そういった場所はふだんの暮らしの中では足が運びにくいもの。もっと日常の中に、星空や宇宙に出会える場所を作り出したい、そういった思いで企画されたのが六本木天文クラブです。東京都心にそびえ立つ六本木ヒルズ森タワーの屋上にあるスカイデッキは、そのような意味では文字通り最高の場所。仕事帰りに気軽に立ち寄れて、そして、東京のきらめく夜景を足元に見ながら星空を楽しめるのは、六本木天文クラブの大きな強みとなっています。天体観望会や天文学セミナーを中心に始まったこの活動ですが、少しずつ六本木に根を下ろし、いまや多くの人々に支えていただく存在となりました。

【1時間目】記念講演「現代天文学は私たちにどのように役立つのか」

役に立たないものの代表としてよく引き合いに出されるのが、天文学です。確かに、天文学が経済的な利潤を追究する上で役立つことはほとんどないでしょう。しかし、私たちが生きていく上でもっと大事なものを、天文学は私たちに与えてくれているのではないでしょうか。もしそうだとするならば、天文学はどのような意味で私たちの役に立っていると言えるのでしょうか。

天文学の世界と私たちの住む世界、それぞれの世界を知り尽くした二人のゲストからお話しをうかがいました。

[記念講演の登壇者]
渡部潤一さん(自然科学研究機構 国立天文台 副台長 / 教授)
横山禎徳さん(社会システムズ・アーキテクト)

宇宙の歴史を紐解いていく

自然科学研究機構 国立天文台 副台長 / 教授の渡部潤一さんに宇宙400年の歴史をかい摘んでお話いただく所からこの講演は始まりました。

1905年のアインシュタインの相対性理論、1924年のハッブル“膨張宇宙”の発見、1949年のガモフ“ビッグバン理論”の提唱、1995年のマイヨール&ケローによる太陽系外惑星の発見、天王星、海王星、冥王星の発見を経て、2006年の国際天文学連合“惑星定義”などは、私たちの宇宙観を新たにさせるものでした。

そのようなさまざまな発見や話題の中でも、彗星をご専門とする渡部潤一さんにとっては、世界中の天文学者が大彗星になると確信していた2013年の「アイソン彗星の消失」は、たいへん印象深い出来事であったようです。

「宇宙にはまだまだ分からないことがあると再認識した」

と、当時の立場や状況をユーモアたっぷりに振り返り、会場を盛り上げました。

天文学は役に立つのか?

「天文学がビジネスに役立つとは考えていません」

そう言い切るのは、社会システムズ・アーキテクトの横山禎徳さん。

しかし、天文学者にある論理的な思考を知ることは、ビジネスも含め、これからの時代を切り拓いていく人々の役に立つと横山禎徳さんはおっしゃいます。

そもそも人間は、飽くなき好奇心によってさまざまな謎を見つけ、それを解明することを欲し続ける存在です。人工知能技術が発展を遂げる現代においては、そのような人々の知的な欲望の対象は、人工知能によって踏み荒らされない分野に、つまり、生命や意識、宇宙へと向けられつつあります。ウィルヘルム・ヴォリンガーの「精神的空間恐怖」やジェレミー・イングランドが提唱する「散逸適応」といった思考は、その象徴的な例です。そして、そういった思考を引き出す場としてもっとも魅力的な存在が、宇宙ではないでしょうか。例えば、人間にとってもっとも理解しがたいことのひとつは「時間」だと思いますが、これは宇宙そのものです。進化生物学者たちが無神論的に世界を語るのに対して、時間や空間を扱う天文学者たちが、無神論を超越して世界を語ろうとすることは、興味深いことです。ダイナミックに発展する天文学や宇宙物理学の世界は、私たちに終わりのない謎を提供してくれる存在だと、横山禎徳さんは指摘します。

雑誌「Whole Earth Catalogue」の言葉、 ”Stay hungry. Stay foolish.”

上の画像のスライドに映し出されているのは、スチュアート・ブランドが創刊した雑誌「Whole Earth Catalogue」の最終号の裏表紙に綴られた “Stay hungry. Stay foolish.”(ハングリーであれ、愚かであれ)という言葉です。アップルのスティーブ・ジョブズが引用したことでも知られる警句ですが、これが宇宙に浮かぶ地球の姿を表紙に用いた「Whole Earth Catalogue」のメッセージとして添えられていたことは、興味深いことです。

当時、誰も見たことのなかった地球の姿は、多くの若者を魅了し、絶大なインパクトを与えたのです。このような宇宙がもたらすヴィジュアルの力には、もっと注意を向けても良いでしょうと横山禎徳さんは指摘されました。

天文学における好奇心

 『天文学は何の役に立ちますか?』と聞かれることもありますが、人間は考える動物なので、考える部分で役に立つと思っています。

例えば音楽を聞いたり、好きな画家の絵を観に美術館に足を運んだりすることは、「動物として」は不必要な行為。そんなことをしなくても生きていけるわけですから。

天文学もそれと同じなんです。役には立たないけれど、それを知ることによって好奇心を満たす。そう言った一部分もあるのではないかと思うんです。

 われわれにとって、天文学は「意識の変革」にものすごい役に立っているんです。いろんな世界観があるということを天文学が示してくれます。「ビジネスにとって」役に立つとか役に立たないとかはどうでも良いことです。「ビジネスに役に立つか」という考え方はしない方がいいですよ。

 第2部の「これからの宇宙の楽しみ方」で話す方々は、宇宙のビジネスの話をしますがね(笑)

 知が広がることは思考が広がることに繋がりますから、もちろんビジネスにとっても役に立ちますよ!!要するに、天文学を理解するということは、ふだんよりも大きな遠近法で物を見るということ。地球のことを理解することとは全然違いますから。

ビジュアルが与えるインパクト

 月周回衛星「かぐや」をご存じでしょうか。この「かぐや」には、科学的な観測装置を載せるべきだという反対意見を押し切って、NHKが開発したハイビジョンカメラが載せられていました。このカメラが月の表面の様子を撮影して公開したのですが、そもそも月はモノクロの世界なので、当時、多くの人がこれは白黒カメラだと思っていたんです。

しかし、青い地球が月の地平線から顔を出した様子を見て、初めて皆さんがこのカメラはカラーだったと知りました。
その高精細な映像は世界中に配信されたのですが、面白い事に、俳句と短歌の世界で月をうたう人が増えました。あの月の映像は、文化的にものすごいインパクトだったんですね。

たとえそれが科学的な研究成果につながらなくても、大きな武器になるんじゃないかなと私は思うんです。
アポロの月面着陸やはやぶさ帰還の感激など、宇宙の歴史は常にインパクトあるビジュアルとともにありました。このような関係は、今後も続いていくのかなと思います。

 やはり最後はビジュアルで確認したいんじゃないかなと思います。
望遠鏡で見る時代は終わり、デジタル化されたデータを眺めるだけになることに、私は何となく違和感を感じています。
月の地平線から地球が上がってくる映像は有名なシーンで、ああいうリアルなインパクトがもっとあると、われわれの深層心理の中で物の考え方がかなり変わるだろうと私は思います。

1時間目の<記念講演>「現代天文学は私たちにどのように役立つのか」では、宇宙の歴史や、天文学が私たちに与える好奇心や知への探究心、宇宙が見せるビジュアルのインパクトの重要性など、専門的なお話を交えつつ幅広い「知」の観点からお話を伺うことができ、宇宙への理解を深める機会となりました。

ディープな宇宙の話が聞ける講演となりましたが、宇宙の楽しみ方は100人いたら100通りの楽しみ方があるはずです。

気軽に楽しみたいという方にもおススメなのが、六本木ヒルズ屋上で定期的に行われている「天体観望会」で、これからの天体観望会の予定も下に書いてみました。
あなたにとっての宇宙の楽しみ方をぜひ見つけてみてください☆

また、2時間目「これからの宇宙の楽しみ方」では、最先端の分野で活躍する専門家の方々5名のお話も伺いましたので、この次の記事にてご紹介したいと思います。


1時間目の記念講演 登壇者プロフィール

渡部潤一さん(自然科学研究機構国立天文台副台長 / 教授)

東京大学理学部卒、同大学院卒。東京大学東京天文台を経て、現職。総合研究大学院大学教授。理学博士。太陽系天体の研究のかたわら最新の天文学の成果を講演、執筆などを通してやさしく伝えるなど幅広く活躍。国際天文学連合では、惑星定義委員として準惑星という新カテゴリーを誕生させ、冥王星をその座に据えた。
主な著書に『最新 惑星入門』(朝日新書)、『面白いほど宇宙がわかる15の言の葉』(小学館101新書)、『新しい太陽系』(新潮新書)、『夜空からはじめる天文学入門』(化学同人)、『ガリレオが開いた宇宙のとびら』(旬報社)などがある。

横山禎徳さん(社会システムズ・アーキテクト)

前川國男建築設計事務所、デイビス・ブロディ・アソシエーツ等で設計に従事後、1975年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。87年ディレクター、89年から94年まで東京支社長。2002年退職。その後、イグレックSSDI 代表として「社会システム・デザイン」という分野の確立、発展に向けて活動する一方、東京大学総長室アドバイザー、県立広島大学 経営専門職大学院(HBMS)経営管理研究科長、株式会社エアウィーヴ社外取締役なども兼務している。主な
著書に『社会システム・デザイン-組み立て思考のアプローチ-「原発システム」の検証から考える』、『東大エグゼクティブ・マネジメント デザインする思考力』、『東大エグゼクティブ・マネジメント 課題設定の思考力』(2冊とも共著、東京大学出版会)などがある。



六本木天文クラブの今後の活動

毎月第4金曜日は六本木天文クラブの日。

毎月第4金曜日に星のソムリエ®による星空解説セミナーと屋上スカイデッキで天文学の専門家の解説とともに空を見上げる星空観望会を開催しています。

天文の専門家と一緒に星空と夜景を楽しみましょう!

2019年度の今後のスケジュール

2019年10月25日(金)
19:00~20:00「星空セミナー」 (3Fプレゼンルーム)
19:00~21:00「星空観望会」 (スカイデッキ)

2019年11月22日(金)
19:00~20:00「星空セミナー」 (3Fプレゼンルーム)
19:00~21:00「星空観望会」 (スカイデッキ)

2019年12月14日(土)
19:00~22:00「ふたご座流星群観望会」 (スカイデッキ)

2019年12月15日(日)
19:00~22:00「ふたご座流星群観望会」 (スカイデッキ)

2019年12月26日(木)
14:00~19:00「部分日食特別観望会」 (スカイデッキ)

2019年12月27日(金)
19:00~20:00「星空セミナー」 (3Fプレゼンルーム)
19:00~21:00「星空観望会」 (スカイデッキ)

2020年1月24日(金)
19:00~20:00「星空セミナー」(3Fプレゼンルーム)
19:00~21:00「星空観望会」(スカイデッキ)

2020年2月28日(金)
19:00~20:00「星空セミナー」 (3Fプレゼンルーム)
19:00~21:00「星空観望会」 (スカイデッキ)

2020年3月27日(金)
19:00~20:00「星空セミナー」 (3Fプレゼンルーム)
19:00~21:00「星空観望会」 (スカイデッキ)


六本木天文クラブ10周年記念 限定デザイン年間パスポート

六本木天文クラブ10周年を記念して、限定デザインの年間パスポートを1,000枚限定で販売!
東京シティビュー屋内展望回廊、スカイデッキ、森美術館へ1年間、何度でも入館できる、お得なカードです。

内容
森美術館+東京シティビュー パスポート「六本木天文クラブ」10周年記念ver.限定デザイン

六本木ヒルズ展望台 東京シティビュー
森タワー52F/屋上スカイデッキ


執筆者プロフィール

ゆみ
星空をこよなく愛する宙ガール編集部員☆『宇宙兄弟』公式サイトにて、宇宙関連情報記事のライターを担当。

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